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ロックイン検出の原理

Principles of Lock-in Detection

Introduction

ロックインアンプは, 1930年代[123]に発明され、非常にノイズの多い環境でも信号の振幅や位相を測定できる装置として20世紀半ばに製品化されました [4] (図 1)。この測定手法は、ホモダイン検出方式とローパスフィルタを使用して、周期的な参照信号に対する入力信号の振幅と位相を測定します。ロックイン測定は、参照周波数周辺の特定の周波数帯域の信号を抽出し、他のすべての周波数成分を効率的に除去します。現在市販されている最も優れた機器は、120 dB [5] のダイナミック・リザーブを有しており、これは、対象の信号より最大100万倍高い振幅のノイズの存在下で信号を正確に測定することができることを意味しています。
何十年にわたる進化の中で、研究者たちはロックインアンプを使用する、さまざまな使い方を見つけ出してきました。有名な用途としては、精密なAC電圧およびAC位相計、ノイズ測定、インピーダンス・スペクトロスコピー、ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザ、フェーズロックループ内の位相検出器などがあります。研究の領域には、太陽光のコロナ観測 [6] 、分数量子ホール効果の測定 [7] 、分子内の原子間の結合特性のダイレクトイメージング [8] など、ほとんどすべての距離スケールと温度領域に及びます。ロックインアンプは非常に多用途です。スペクトラム・アナライザやオシロスコープと同様に、物理学から工学、生命科学に至るまで、あらゆる実験室において広く使われます。動作原理と機能をしっかりと理解できると、強力なツールとして最大限に活用し、首尾よく実験をデザインすることができます。

このドキュメントでは、ロックインアンプの原理を簡単に紹介し、最も重要な測定の設定について説明します。また、ロックイン検出技術について、時間、周波数の両ドメインから解説します。さらに、短い取得時間で信号対雑音比 (S/N比) を改善するための、変調信号の利用について詳細に説明します。最後に、最近の技術の進歩について説明し、最新技術について説明します。

fig01 buried signal

図1:ロックインアンプを使用すると、信号全体がノイズに埋もれていても、特定の参照信号に対する信号の振幅と位相を測定できます。

ロックインアンプの動作原理

ロックインアンプは、信号の経時変化に関する情報を利用して、ノイズの多いバックグラウンドから信号を抽出します。ロックインアンプは、ダウンコンバージョンまたはヘテロダイン/ホモダイン検出と呼ばれる手法で、参照信号と入力信号を乗算し、その結果に調整可能なローパスフィルタを適用します。この方法は復調または位相敏感検出と呼ばれ、目的の周波数の信号を他のすべての周波数成分から分離します。参照信号は、ロックインアンプ自体によって生成するか、ロックインアンプに入力される外部ソースが使われます。

参照信号は、通常正弦波ですが、他の波形を使うこともできます。純粋な正弦波による復調は、基本周波数またはその高調波のいずれかでの測定を選択的に行なうことができます。ロックインアンプの種類によっては方形波 [9]を使用していますが、これは信号のすべての奇数高調波を取り込むため、系統的な測定誤差が生じる可能性があります。

ロックイン検出を理解するために、まず周波数変換について、次にフィルタリング処理について、時間ドメインと周波数ドメインの両面から見ていきます。

デュアルフェーズ復調

fig02 dual phase

図2:(a)典型的なロックイン測定の概略図。正弦波信号によってDUTを動作させ、同時に参照信号として使用します。DUTのレスポンスは、参照信号に対する信号の振幅および位相を出力するロックインアンプによって解析されます。(b)ロックインアンプの概略図: 入力信号を参照信号と\(90^\circ \)位相シフトした参照信号で乗算します。ミキサの出力は、ノイズおよび\(2\omega\)成分を除去するために、ローパスフィルタに通し、最終的に極座標系に変換されます。

一般の実験では、図2(a) に示すように、被試験デバイス (DUT) は正弦波の信号で動作させます。ロックインアンプでは、デバイスのレスポンス\(V_s (t)\) および参照信号\(V_r (t)\) を、振幅\(R\) および位相\(\Theta\)を決定するために使用します。ここでは、図2(b) に示す、いわゆるデュアルフェーズ復調回路を使用します。入力信号は分割され、参照信号およびその\( 90^\circ \)位相シフトされた信号のコピーと個別に乗算されます。ミキサの出力は、設定可能なローパスフィルタを通って、同相および直交成分と呼ばれる2つの出力\(X\) および\(Y\)となります。振幅\(R\) と位相\(\Theta\) は、関係式を用いてデカルト座標から極座標への変換によって、\(X\) と\(Y\) から容易に導出されます。

\[\begin{align*}
 &R=\sqrt{X^2+Y^2},\\
 &\Theta = \rm{atan2}(Y,X).
\end{align*}\]
<p style="text-align: right">(1)</p>

ここで、4つの象限すべてをカバーする位相角の出力範囲、すなわち\( ( -\pi, \pi ) \)を得るために、\( \rm{atan} \) の代わりに\(\rm{atan2} \) が使用されていることにご注意ください。

図2(b) は、ロックインアンプが入力信号を二つの異なる位相で復調するために、入力信号を分割する必要があることを示しています。アナログ機器とは異なり、デジタルテクノロジでは、分割時のS/N比の低下やチャネル間のミスマッチを回避できます。

時間ドメインにおける信号のミキシング

複素数を使用すると、簡単な数式で復調のプロセスを計算できます。ここではまず基本的な三角関数を使用します。

\[\cos(x)=\frac{1}{2}e^{+ix}+\frac{1}{2}e^{-ix}\]
(2)

入力信号\(V_s (t)\) を、同じ速度\( \omega_s \) で回転する長さ\( R/ \sqrt{2} \) の複素平面上の2つのベクトル(一方は時計回り、他方は反時計回り)の和に書き換えます。

\[\begin{align*}
 V_S(t)&=\sqrt{2}R\cdot \cos(\omega_St+\Theta) \\
 &= \frac{R}{\sqrt{2}}e^{+i(\omega_st+\Theta)}+\frac{R}{\sqrt{2}}e^{-i(\omega_st+\Theta)}.
\end{align*}\]
(3)

図3(a) (b)のグラフから、x軸に射影したベクトル和(実部)は正確に\(V_s (t) \) であり、y軸に射影したベクトル和(虚部)は常に\( 0 \)であることがわかります。

デュアルフェーズのダウンコンバージョンは、入力信号と複素参照信号との乗算として数学的に表現できることが分かります。

\[V_r(t)=\sqrt{2}e^{-i\omega_rt}=\sqrt{2}\cos(\omega_rt)-i\sqrt{2}\sin(\omega_rt).\]
(4)
 
fig03 rotating observer

図3:複素平面に表した復調処理。(a) 入力信号\(V_s (t)\)は2つの逆回転ベクトルの和として表すことができます。(b)\( x \) 軸への射影は加算され、虚数である\( y \) 軸への射影は打ち消されます。(c) 回転するフレームでは、反時計回りのベクトルは静止しており、時計回りに動くベクトルは観測者の角速度の2倍で回転しています。なお、慣習的に、反時計回りのベクトルが基準より前にある場合、\(\Theta\) は正となることにご注意ください。

変換後の複素信号は、

\[\begin{align*}
Z(t) &= X(t)+iY(t)=V_s(t)\cdot V_r(t)\\
 &= R\left [ e^{i\left [ (\omega_s-\omega_r)t+\Theta \right ]} +e^{-i\left [ (\omega_s+\omega_r)t+\Theta \right ]}\right ],
\end{align*}\]
(5)

と表わされ、信号周波数と参照周波数の和と差の信号成分が含まれます。図3(c)の図において、複素周波数変換は、原点に位置し、周波数\( \omega_r \)で反時計回り方向に回転する観察者と等価です。

この観察者の眼では、2つの矢印は、異なる角速度\( \omega_s-\omega_r \)および\(\omega_s+\omega_r \)で回転するように見え、矢印\( \omega_s+\omega_r \)は、信号と参照周波数が近い場合には、より速く回転して見えます。

続くフィルタリングは、数学的には移動ベクトルの時間平均として表現され、角括弧 \( \left \langle ... \right \rangle \) で示されています。フィルタリングは、\( \left \langle exp\left [ -i(\omega_s+\omega_r)t+i\Theta \right ] \right \rangle = 0 \) とすることにより、\( | \omega_s + \omega_r | \)の高速回転項を除去します。 復調後の平均化信号は、次のように表されます。

\[Z(t)=R\cdot e^{i[(\omega_s-\omega_r)t+\Theta]}.\]

(6)

等しい周波数\( \omega_s = \omega_r \)の場合、これはさらに次のように単純化されます。

\[Z(t)=R\cdot e^{i\Theta}.\]
(7)

式7は復調信号とロックインアンプのメインの出力で、絶対値\( |Z| = R \) は信号の実効振幅として与えられ、その引数\( \rm{arg}(Z) = \Theta \)は参照信号に対する入力信号の位相となります。

fig04 sinusoids mixing

図4:(a)ピーク振幅が0.5 Vの入力信号\( V_s \)(赤)は、同じ周波数の参照信号\(V_r\) (青)と乗算されています。(b)出力信号は、直流オフセットと、\( V_s \)および\( V_r \)の2倍の周波数成分を持っています。直流の値は0.17 Vであり、入力信号の同相成分である\( X \)を表しています。(c)入力信号\( V_s \)に参照\( V_r \)を異なる周波数で乗算した場合。(d)得られた信号は、\( f_s - f_r \)および\( f_s + f_r \)の周波数成分になり、平均値は常に0です。

復調信号\( Z (t) \) の実部および虚部は、同相成分\( X \) および直交成分\( Y \)となっています。これらはオイラーの式 \( exp(i \omega_s t) \equiv \cos(\omega_s t) + i \sin(\omega_s t) \)を用いて以下のように得られます。

\[\begin{align*}
 X&= Re(Z)=\left \langle V_s(t)\cos(\omega_st) \right \rangle=R \; \cos \; \Theta,\\
 Y&= Im(Z)=-\left \langle V_s(t)\sin(\omega_st) \right \rangle=R \; \sin \; \Theta.
\end{align*}\]
(8)

図では、\(\omega_s = \omega_r \)は、反時計回りに回転する矢印が静止状態で現れることを意味し、一方の矢印は周波数の2倍、すなわち \( -2 \omega_s \)で時計回りに回転するので、\( 2 \omega \)成分と呼ばれます。ローパスフィルタでは\(2 \omega\)成分が完全に除去されます。

図4は、オシロスコープで観察した周波数変換およびフィルタリングの前後の信号の変化を示しています。図4(a)は、正確に同じ周波数の\(\omega_s \)および\( \omega_r \)の正弦波信号例\(V_s\)および\(V_r \)を時系列的に示しています。ミキサの出力の信号(図4(b)の青色のトレース) は、ほとんどが\(2 \omega \)の成分です。フィルタリング後、緑色のトレースは、DC成分のみが残り、これは\(V_s\)の同相振幅\(X\)に等しくなります。図4(c) に示すように、信号周波数と参照周波数がずれていると、ミキサ出力の信号は単純な正弦波ではなくなり、図4(d)に示すように、フィルタリング後の信号は平均して\(0\)になります。これは完全な状態の同期検波の例であり、参照周波数とコヒーレントな信号のみを抽出し、他の信号はすべて除去されることを示しています。

周波数ドメインにおける信号のミキシング

時間ドメインと周波数ドメインとを変換するには、フーリエ変換を用います [10] 。フーリエ変換は線形変換で、時間ドメインにおける周波数\( f_0 \)の正弦関数を、周波数ドメインにおけるディラックのデルタ関数\( \delta(f-f_0) \)、即ちスペクトルにおいて周波数\( f_0 \)での単一ピークに変換します。すべての周期的信号はサインとコサインの重ね合わせとして表現できるので [11] 、少数のスペクトル成分からなる信号の変換は多くの場合直感的に理解できます。

図5(a)は時間ドメインで表わされる雑音のある正弦波を示し、これをフーリエ変換すると図5(b) の周波数ドメインになります。正弦波信号はスペクトルの\(+f_s \) と\(-f_s \) にピークとして現れます。周波数\(0\)での小さなピークは、入力信号のDCオフセットによって発生します。図5(c) の青色のトレースは、ミキサ出力の時間ドメイン信号を表します。図5(d) に示す関連スペクトルは、基本的に (b) のスペクトルのコピーで、参照周波数\(f_r\)分だけ低周波数側にシフトしています。

fig05 noisy fft

図5:復調前後の時間および周波数ドメインでの関係。(a)ノイズが重畳された正弦波入力信号の時間変化。(b)周波数ドメインにおける (a) と同一の信号。(c)参照信号での周波数変換後 (青色トレース) およびローパスフィルタ後 (赤色トレース) \(f_{\rm{BW}}\)の信号スペクトルが残ります。(d)周波数ドメインでは、周波数変換により周波数成分が\(-f_r\)分シフトします。次に、フィルタがゼロ付近の\(f_{\rm{BW}}\)狭い周波数範囲を取り出します。周波数\(-f_r\)の成分は、入力信号のオフセットと1/fノイズに由来するものであることに注意してください。正確な測定値を得るためには、この成分を適切なフィルタリングにより除去する必要があります。

ローパスフィルタは (d) で赤色の点線のトレースとして示され、所定のフィルタ帯域幅\(f_\rm{BW}\)までの周波数を選択します。(c) の赤色トレースの出力信号は、 (d) に示されたスペクトルのDC成分にフィルタ帯域幅\(|f|<f_\rm{BW}\)内のノイズ成分を足したものです。この図から、入力信号のオフセットを効率的に抑制するためには、信号周波数\(f_s\)よりも格段に小さい帯域幅のフィルタが必要であることがわかります。次のセクションでは、実験条件に適したフィルタ特性を選択する方法について説明します。

周波数ドメインにおけるローパスフィルタリング

ほとんどのフィルタでは、入力信号\(Q_{in}(\omega)\)とフィルタリングされた信号\(Q_{out}(\omega)\)との間に次式で与えられる単純な関係があるので、ローパスフィルタ処理については、周波数ドメインから検討します。
 
\[Q_{out}(\omega)=H(\omega)Q_{in}(\omega).\]
(9)

\(H(\omega)\)はフィルタの伝達関数と呼ばれます。\(Q_{in}(\omega)\)および\(Q_{out}(\omega)\)は、それぞれ、時間ドメイン入力信号\(Q_{in}(t)\) および出力信号\(Q_{out}(t)\)のフーリエ変換に対応します。

fig06 cascaded filters

図6:(a)一次RCフィルタとその伝達式。(b)複数のRCフィルタを直列にすることにより、高い周波数域でのより急峻なロールオフが可能となります。伝達関数は、各フィルタの伝達関数の掛け合わせによって得られます。

スペクトルの不要な部分を完全に除去するために、理想的なフィルタは、\(f_\rm{BW}\)未満のすべての周波数、すなわち通過帯域に対して完全な伝達率があり、他のすべての周波数 (阻止帯域とも呼ばれる) に対しては伝達率がゼロとなるべきであると思われるかもしれません。残念ながら、このように理想的な 「ブリックウォール型フィルタ」 は、そのインパルス応答が時間的に\( -\infty \)から\( +\infty \)まで広がるために、非因果的で実現することは不可能です。ここで基本的な近似として、図6に示すRCフィルタモデルを考えます。このタイプのフィルタは、アナログとデジタルの両方で容易に実装できます。アナログRCフィルタの伝達関数は、

\[H(\omega)=\frac{1}{1+i\omega\tau},\]
(10)

図7(a)と(b)の青色の線は、この伝達関数\(20\log |H(2\pi f) \)と\( \arg[H(2\pi f)]\)を\( \log(f)\)の関数としてボード線図で表したものです。

fig07 filters tau

図7:(a)および(b)の青色のトレースは、RCフィルタの伝達関数\(H(\omega)\)をボード線図で示しています。同じフィルタ時定数\(\tau\)を持つ高次フィルタ(\(n =2, 4, 8\) )の伝達関数についてもプロットし、より低い周波数帯域幅\(f_{-3\rm{dB}} \)となることを示しました。複数のフィルタを直列に接続すると、同じレベルに到達するまでのセトリング時間が大幅に増加します。これは (b) から推測されるより大きな位相遅延に関係しています。直列RCまたは積分器フィルタのもう1つの優れた特徴は、例えばバタワース型フィルタの課題である、時間ドメインにおけるオーバーシュートがないことが挙げられます。

fig08 filters cutoff

図8: 図7と同じグラフのセットで、すべてのフィルタは同じカットオフポイント\(f_{-3\rm{dB}} \)で、異なる時定数(\(\tau = 0.16, 0.10, 0.069, 0.048\) )の場合。 (a)高次のフィルタは、高い周波数側でより急峻なロールオフ特性となります。(b)高次フィルタはより大きな位相遅延があるため、フィードバックのアプリケーションにおいて悪影響を及ぼす可能性があります。(c)1次フィルタの時定数\(\tau_1 \)を単位とする時間の関数としてのステップ応答。低次のフィルタは、入力信号の最初の変化に対してより高速に応答しますが、このメリットは時間の経過とともに減少し、拡大図で分かるように、ある時点で高次フィルタが低次フィルタを 「追い越す」 ことも生じます。

Order Time Roll-off   Bandwidth in units of \(1/ \tau\)   Settling times in units of \(\tau\)
n constant \(\tau\) dB/oct dB/dec   \(f_\rm{-3dB}\) \(f_\rm{NEP}\) \(f_\rm{NEP}\)\(/\)\(f_\rm{-3dB}\)   63.2% 90% 99% 99.9%
1 1 6 20   0.159 0.250 1.57   1.00 2.30 4.61 6.91
2 1 12 40   0.102 0.125 1.23   2.15 3.89 6.64 9.23
3 1 18 60   0.081 0.094 1.16   3.26 5.32 8.41 11.23
4 1 24 80   0.069 0.078 1.13   4.35 6.68 10.05 13.06
5 1 30 100   0.061 0.069 1.12   5.43 7.99 11.60 14.79
6 1 36 120   0.056 0.062 1.11   6.51 9.27 13.11 16.45
7 1 42 140   0.051 0.057 1.11   7.58 10.53 14.57 18.06
8 1 48 160   0.048 0.053 1.10   8.64 11.77 16.00 19.62
表1: 同じ時定数を持つn次RCフィルタのフィルタ特性の一覧。動的なアプリケーションでは、通常、\(f_{-3\rm{dB}} \)とセトリング時間が考慮されますが、ノイズ測定では、適切な\(f_\rm{NEP}\)が正確な結果を得るための鍵となります。上記の関係式により、同じ帯域幅で異なる次数のフィルタに対するフィルタ時定数を容易に計算できます。

図7(a)の青色の曲線から、\(f_{-3\rm{dB}} \)から周波数が10倍になるごとに減衰量が10倍になることがわかります。これは6 dB/octave (20 dB/decade) に相当し、周波数が2倍になるごとに振幅が1/2に減少します。カットオフ周波数\(f_{-3\rm{dB}} \)は、信号電力が-3 dBまたは1/2に減少する周波数として定義されています。振幅は電力の平方根に比例し、\(f_{-3\rm{dB}} \)で\( -3\rm{dB}= 1/\sqrt{2}= 0.707\)だけ減少します。

式10で表されるフィルタについては、カットオフ周波数は\(f_{-3\rm{dB}} =1/(2\pi\tau)\)で表されます。図7(b)から、ローパスフィルタは、\(\arg[H(\omega)]\) の周波数に依存する位相遅延をもたらすことも分かります。

理想的ブリックウォール型フィルタと比較して、一次フィルタのロールオフ特性はかなり劣っています。ロールオフの勾配を大きくするために、これらのフィルタのいくつかを直列にすることが一般的です。フィルタを追加すると、フィルタの次数が1ずつ増加します。一つのフィルタの出力が次のフィルタへの入力になるため、これらの伝達関数を単純に乗算することができます。したがって、式9から、n次フィルタの次の伝達関数が得られます。

\[H_n(\omega)=H_1(\omega)^n=(\frac{1}{1+i\omega\tau})^n.\]
(11)

この減衰量は一次フィルタの減衰量のn倍となり、合計のロールオフは\(n \times 20\) dB/decとなります。1次, 2次, 4次, 8次のRCフィルタの周波数応答を図7 (a),(b)に示します。フィルタの次数が高い程、振幅伝達関数はブリックウォール型フィルタの挙動に近くなります。一方、フィルタ次数が高くなると位相遅れは大きくなります。システムのフィードバックに位相が影響するアプリケーション、例えば、フェーズロックループの場合、付随加的な位相遅延は、制御ループの安定性および帯域幅に制限を与える可能性があります。

図8(a)と(b)は、同じ周波数帯域幅\(f_{-3\rm{dB}} \)で異なる時定数を持つ異なる次数のフィルタのボード線図を表しています。表1は、対応するフィルタ特性の関係を示しています。 ノイズ測定では、3 dBの周波数帯域幅\(f_{-3\rm{dB}} \)ではなく、等価ノイズ帯域幅\(f_\rm{NEP}\)でフィルタを指定する方が便利な場合があります。等価ノイズ帯域幅は、我々が指定したいフィルタと同じ量のホワイトノイズを伝送する理想的なブリックウォールフィルタのカットオフ周波数で表されます。直列RCフィルタの場合の、\(f_\rm{NEP}\)と \(f_{-3\rm{dB}} \)間の変換係数を表1に示します。 入力信号\(V_s (t)\) と参照信号\(\sqrt{2}\exp(-i\omega_r t)\)をミキサに入力すると、入力信号スペクトルは復調周波数\( \omega_r\)だけシフトして\(V_s (\omega_s-\omega_r)\)となります。ローパスフィルタリングは、フィルタ伝達関数\(H_n(\omega)\)による乗算によりスペクトルをさらに変換します。復調された信号\(Z(t)\)は、参照周波数の周囲のすべての周波数成分を含み、フィルタ特性によって重み付けされています。

\[Z(\omega)=V_s(\omega-\omega_r)H_n(\omega).\]
(12)

この式は、復調によりバンドパスフィルタのように、\( f_r \)を中心として両側に \(f_{-3\rm{dB}} \)ずつ広がる周波数スペクトルを取り出せることを明確に示しています。さらに、復調信号のフーリエ変換をフィルタ伝達関数で割れば、復調周波数\( f_r \)付近の入力信号のスペクトルを復元できることも示しています。この方式のスペクトラム解析はFFTスペクトラム・アナライザでよく使用され、Zoom FFT[12] と呼ばれることもあります。

時間ドメインにおけるローパスフィルタ

フィルタの時間ドメインでの特性は、図7(c)および図8(c)に示すように、ステップ応答によって明確に表現できます。これらのプロットは、フィルタへの入力を0から1までステップ状に変化させた場合に対応します。フィルタの出力が変更後の値に落ち着くまでには、ある一定の時間が必要で、フィルタを通過した信号を正確に測定するためには、測定前に十分に長いセトリング時間を待つ必要があります。

表1は、次数が異なる時定数τが同一のフィルタについて、最終値の63.2%, 90%, 99%, 99.9%に到達する時間を示したものです。1 MHzの信号があり、1 MHz付近で1 kHzの帯域幅を持つ4次フィルタを使用するとします。表1の数値から、時定数は69 μs、1%エラーまでのセトリング時間は0.7 msであることが導き出されます。

信号のダイナミクスと復調帯域幅

復調帯域幅の設定は、多くの場合、時間分解能とS/N比のトレードオフになります。搬送波周波数\(f_c = {\omega_c} / {2\pi} \)の振幅変調(AM)信号を考えてみます。

\[V_s(t)=\left [ 1+h\, \cos(\omega_mt) \right ]\,\cos(\omega_ct+\varphi_c)\]
(13)

図9のように表現し、異なる実験課題に対する要求をどのように満たすことができるかを考えます。図9の青色の線で示した信号振幅\(R(t)=1+h\cos(\omega_mt)\)は、平均値1を中心に周波数\(f_m=\omega_m/{2\pi}\)で変調され、変調の強度は変調度\(h\)で表されます。この例では、搬送波周波数\(f_c\) = 2 kHz、変調周波数\(f_m\) = 100 Hzとしました。

図3に出てきた複素表現を使って、図10(a)にミキサ出力のAM信号を示します。その変調状態\(|1+h\cos(\omega_mt)|\)は時間波形ですが、その角度\(\varphi_c\)は一定となります。\(\cos(\omega_mt)\) の項は、2つの逆回転ベクトル \(\exp(i\omega_mt)\) と\(\exp(-i\omega_mt)\) の和で表されます。この2つのベクトルは、図10(d)に見られるように、振幅変調された信号の周波数スペクトルの上側と下側のサイドバンドを表しています。図10(b)は直交成分、(c)は同相成分を表します。

fig09 am in time-domain

図9:振幅変調信号:緑色のトレースは搬送波入力信号(わかりやすくするため低い周波数で表示しています)。青色のトレースは信号振幅を示し、入力信号の包絡線となります。

fig10 am sidepeaks

図10:(a)回転基準フレームにおける振幅変調信号は、時間依存の長さを持つベクトルとなります。その瞬間の信号は青い太い矢印で表され、細い矢印はAM信号の2つのサイドバンドを表しています。(b)と(c)は復調された入力信号の直交成分と同相成分。青色のトレースはフィルタリングされていない信号、黒、赤、紫の点線はそれぞれ\(f_{-3\rm{dB}} \)= 500 Hz, 100 Hz, 20 Hzでフィルタリングされた信号を表します。(d)3つの異なる帯域幅でフィルタリングした後の復調信号の周波数スペクトル(黒、赤、紫の曲線)。

ほとんどのアプリケーションでは、以下の量のいずれかを測定します。

  • 振幅の時間変化 \(R(t) = 1 + h\cos(\omega_mt)\)
  • 振幅の平均値\( \langle R(t) \rangle \)
  • 変調度\( h \)

一つ目の場合、レート\( f_m\)の振幅変化に追従する復調された信号を測定する必要があります。そのためには\( f_m\)よりかなり大きなフィルタ帯域幅が必要です。例えば、\(f_\rm{-3dB}\)=500Hzの帯域幅を持つ4次フィルタを考えてみましょう。この場合、式11表1から計算できるように、\( f_m\)=100Hz(キャリア\( f_c\)から100Hz離れた位置)での透過率は約98.5%、位相遅れは約20°となります。つまり、変調信号はフィルタの影響をわずかしか受けていません。復調された信号を、図10(b),(c)の黒の点線で示します。

希望のサイドバンドの抑制/透過および位相遅延とは別に、測定におけるノイズの量は、フィルタの選択における重要な判断基準となります。図11では、復調後の比較的ノイズの多いAM信号の例です(a)。(b)は、同じ信号を変調周波数と同じカットオフ周波数でフィルタリングしたものです。このフィルタにより、ノイズの大部分は除去されますが、振幅と位相に系統的な変化が生じるため、正確な結果を得るためには補正が必要です。

二つ目の測定では、フィルタの帯域幅を\( f_m\)より小さくすることで、サイドバンドに相当する周波数成分を除去する方法が使えます。図10(d) の紫の点線、\(f_\rm{-3dB}\) = 20 Hz の4次フィルタは、サイドバンドを 0.03 倍に 30 dB 抑制することができます。図11(c) は、このような強いフィルタが測定に与える影響を示しています。

3番目のケースは、変調度数\(h\)のみ必要で、信号の動特性を完全に解析する必要が無い場合です。例えば、ケルビンプローブ力顕微鏡では、\(h\)は\( f_m\)の交流電圧に応答するプローブと試料間の静電気力の大きさとして使用されます。変調度はサイドバンドの振幅に比例するので、\( f_c-f_m\)と\( f_c+f_m\)のサイドバンドの周りに狭いフィルタをかけることでこの測定が可能になります。これを測定するには、いわゆるタンデム復調と呼ばれる方法と、直接サイドバンド復調の2つの測定方法があります。

タンデム復調では、まず中心周波数付近で広帯域復調を行います。その結果、図11(a)のような信号が得られ、それを再び\(f_m\)で復調します。この方法で測定できる変調周波数は、最初のロックインユニットの最大復調帯域幅より大きくすることはできません。一方ダイレクトサイドバンド復調では、\(f_c \pm f_m\)の信号を一度に復調するため、変調周波数はロックインアンプの周波数帯域によってのみ決まります。また、ダイレクトサイドバンド復調は2台のロックインアンプではなく1台のロックインアンプで動作でき、お勧めの復調方法です。

fig11 am filtering

図11(a)青色のトレースで示す入力信号にノイズが多い場合、ノイズの多い復調信号となります。ノイズのない信号は黒の点線でプロットされています。(b)帯域幅\(f_\rm{-3dB}\)=\( f_m\)= 100 Hzのフィルタを適用すると、ノイズの大部分は除去されますが、検出される信号にも影響が出ます。(c)(b)と同じで、より狭いフィルタ\(f_\rm{-3dB}\)=\( f_m/5\)= 20 Hzを適用した場合の例。

高いS/N比の実現

fig12 noise overview

図12:一般的な実験での標準的なノイズスペクトル。測定周波数は、外来の要因から起こるピークを避けて、バックグラウンドの小さい領域を選択する必要があります。この例では、\(f_2\)は低周波数ドメインの1/fノイズよりも上のクリーンなホワイトノイズ領域にあるため、同じフィルタ帯域幅に対して\(f_1\)よりも良い結果が得られるでしょう。

一般的にフィルタ帯域幅を狭くすると、時間分解能は犠牲になりますが、S/N比は高くなります。S/N比を向上させるためには、他にどのような方法があるでしょう。 測定する信号のレベルを上げることができない場合、ノイズ成分をできるだけ低減するか回避する必要があります。しかし、アナログ信号には常にノイズが存在し、ジョンソン・ナイキスト(熱)ノイズ、ショットノイズ、フリッカーノイズなど基本的な起源のものから、グランドループ、干渉、クロストーク、50-60 Hzの電源ノイズ、電磁ピックアップなど外来のものまで、さまざまなソースから発生するものです。ランダムな電圧ノイズ\(V_\rm{noise}(t)\)の大きさは、その標準偏差で規定されます。周波数ドメインでは、ノイズは\( \rm{V^2/\sqrt{Hz}}\)単位のパワースペクトル密度\(|V_n(\omega)|^2\)、または\(\rm{V/\sqrt{Hz}}\)単位の\(|v_n(\omega)|\)によって特性化されます。

図12の定性的なスペクトルは、ノイズソースによって周波数依存性が異なることを示しています。熱ノイズはすべての周波数に対して、平坦なスペクトルを持つため「ホワイトノイズ」成分となる一方、フリッカーノイズは1/f周波数特性を持つ「ピンクノイズ」の特長があります。変調周波数がある程度の自由に選択できる場合、ノイズレベルが最も低くなるスペクトルの部分を使うことをお勧めします。多くの場合において、スペクトルがホワイトノイズの特性となる高い周波数帯域が最適です。図12はこの周波数の選択方法を示しています。水色と灰色の塗りつぶしで示したフィルタ内部のノイズ量は、例えば低周波の1/fノイズ領域でより大きくなります。したがって、同じフィルタ帯域幅を使用する場合、無線通信などの他のノイズ源の影響がなければ、ノイズ密度が低くなるため、\(f_2\)でのS/N比は\(f_1\)よりも高くなります。

より定量的な例として、1 MΩの抵抗にかかる振幅1 μVの正弦波信号を10 (20 dB)以上のS/N比で測定したい場合を考えてみましょう。このような抵抗器Rはパワースペクトル密度\(\overline{v_{n}^{2}} = 4k_BTR\)の熱雑音を発生し、\(T\) = 300 Kの室温では\(\sqrt{\overline{v_{n}^{2}}} = 0.127\sqrt{R}\:\rm{nV/\sqrt{Hz}} = 127\:\rm{nV/\sqrt{Hz}}\)に相当します[1]。この例では、熱雑音が主要なノイズ源であることが特定されました。これは,ロックインアンプの入力ノイズの10 \(\rm{nV/\sqrt{Hz}}\)以下より明らかに大きく、したがって、S/N比は次のように計算できます。

\[SNR=\frac{1\: (\rm{\mu V})}{127\: (\rm{nV/\sqrt{Hz}}) \cdot\sqrt{f_\rm{NEP}}}=10\]
(14)

この式を\(f_\rm{NEP}\)について解くと、S/N比10を達成するためには、NEPフィルタの帯域幅を620 mHz以下に選択する必要があることが計算できます。ここでは、4次のフィルタを選択した場合、表1より、対応するカットオフ周波数\(f_\rm{-3dB}\) = 549 mHz、時定数\(\tau\) = 126 ms、1%へのセトリングタイムは1.26 sと算出されます。 ノイズの振幅は帯域の平方根に比例するので、S/N比をさらに10倍にするためには、フィルタの帯域を1/100にする必要があります。この場合、1%へのセトリングタイムは2分以上となってしまいます。ロックイン方式は、入力信号のDCオフセットドリフトの影響を受けないため、このような長時間の測定に対応することができます。しかし、DUTの抵抗値やアンプの利得の変化など、他のドリフト要因が長時間の測定に影響を与える可能性が考えられます。そのため、安定した条件、特に温度を一定に保つことが重要となってきます。

最新技術

1930年代初頭から、ロックインアンプは大きく進歩しました。真空管から始まり、デジタルへの移行は順調に進んでいますが、まだ完全とは言えません。デジタルロックインアンプでは、図13(b)に示すように、入力信号は直ちにADC(アナログ/デジタル コンバータ)でデジタルに変換され、その後のステップはすべてDSP(デジタル信号処理)で数値的に実行されます。これに対し、アナログロックインアンプは、信号処理に電圧制御発振器、ミキサ、単純なRCフィルタなどのアナログ素子を使用します。また、アナログミキサ段のフィルタの前または後のみ信号をデジタル化する図13(a)のようなハイブリッド型もあります[9]

fig13 dsp demod
5 Lock-in Amplifiers with Frequency Arrow

図14:Zurich Instrumentsのロックイン・アンプは、ロックイン技術最先端の製品です。異なる周波数範囲のラインナップで、材料特性評価からフォトニクス、量子技術まで、幅広いアプリケーションに適合します。GHFLIはDCから1.8GHzまで、SHFLIは8.5GHzまでの入力周波数帯域があり、マイクロ波帯ロックイン測定のパイオニアです。いずれの測定器も、図16に示すように多くの機能を統合しており、高度な装置制御ソフトウェア LabOne® (図15 参照)からコントロールします。

アナログからデジタルへの移行後、高い演算能力、豊富なメモリと速度を備えたFPGA(Field Programmable Gate Array)が登場し、もう一つの大きな技術革新が起こりました。FPGAは、ほぼすべての信号処理タスクをリアルタイムで実行できるため、柔軟にプログラム可能なデジタルぜんまい動作として理解されています。ロックインに必要な拡張は、復調の前後に時間ドメインと周波数ドメインの分析能力の追加であり、従来は別のオシロスコープとスペクトラムアナライザで行っていたことです。さらに、低デューティサイクルの信号を分析するボックスカー・アベレージャ、フィードバックループ用のPIDおよびPLLコントローラ、測定データをリアルタイムで処理する演算器などを1台の測定器に搭載することができます。測定信号はコンピュータに転送して、さらに解析することができます。他の機器とのアナログインターフェースが必要な場合、測定データを別の機能ユニットを使い、高分解能DACを使用して簡単にアナログ信号に変換できます。

現在、速度と機能の統合レベルで最も先進的な測定器はZurich Instrumentsのロックインアンプです。図14に、すべての測定器ラインナップを入力帯域幅順に示しました。MFLIは、優れたアナログ性能と、汎用性の高い時間・周波数領域解析ツールで、低周波計測では最先端の装置です[5]。2022年、Zurich Instrumentsはマイクロ波のロックインアンプとなるGHFLIとSHFLIを発売しました。高い周波数の測定器でありながら、入力ノイズはわずか3.5 nV/√Hz、ダイナミック・リザーブは100 dBを実現しています[13]。また図16は、UHFLIの主な機能と内部の接続関係をに示したもので、以前はラック1台分の測定器が必要だった機能が、1台の測定器で実現できます[14]。

図16に示すような豊富な機能は、フロントパネルにあるいくつかのノブやボタンで制御・利用するのは不可能であることは明らかです。代わりに、Zurich InstrumentsのロックインアンプではLabOne®を実行しているPCから完全に制御できます。LabOneは、ウェブブラウザを備えたあらゆるデバイスでグラフィカルユーザーインターフェイスが利用できる、最新のブラウザテクノロジーを使用した計測器制御ソフトウェアです(図15参照)。パラメトリックスイーパー、ソフトウェアトリガー、PIDアドバイザーのような高度なツールは、ホストPCの処理能力を測定タスクに活用し、測定結果の信頼性を向上させ、より効率的なワークフローを可能にします。さらに、LabOneはPython, C, MATLAB®, LabVIEWTM, .NETのプログラミングインターフェースも提供しており、既存の実験制御環境に測定器を簡単に統合することができます。

LabOne UI single screen

図15:Zurich InstrumentsのロックインアンプのLabOne®ユーザーインターフェースは、最新のウェブブラウザ技術を採用しています。複数のPCやタブレット端末などの複数のブラウザセッションから、同時に機器を制御することができます。すべての信号解析および制御ツールには、専用のタブが用意されており、ブロック図を用いた表示等により、直感的に操作できます。

fig16 uhf overview

図16:Zurich Instruments UHFLIの主な機能とそれらの間の信号フローを示すブロック図。高速デジタル信号処理は測定器内部のFPGAだけでなく、USBまたは1GbEで接続された装置制御ソフトウェアであるLabOne®が動作しているPC上でも行われます。装置内部の主な機能は、8つのデュアルフェーズ復調器、デジタイザ機能(DIG)とFFTを備えたオシロスコープ(Scope)、PLL機能を備えたPIDモジュール、演算ユニット(AU)、周期波形アナライザ(PWA)を備えたボックスカー・アベレージャ、パルスカウンタモジュール(CNT)です。信号発生用に、正弦波信号発生器(OSC)と、複雑な信号形状の任意波形発生器(AWG)を備えています。PC上で動作するLabOne制御ソフトウェアには、パラメトリックスイーパ、スペクトラムアナライザ、数値パラメータ表示、プロッタ、時間領域解析用データ収集モジュール(DAQ)、ハーモニックアナライザを実現します。

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参考文献

[1] C. R. Cosens. A balance-detector for alternating-current bridges. Proceedings of the Physical Society, 46:818, 1934.
[2] W. C. Michels. A Double Tube Vacuum Tube Voltmeter. Rev. Sci. Instrum., 9:10, 1938.
[3] W. C. Michels and N. L. Curtis. A Pentode LockIn Amplifier of High Frequency Selectivity. Rev. Sci. Instrum., 12:444, 1941.
[4] Interview of Robert Dicke by Martin Hawrit.Niels Bohr Library and Archives, College Park, MD: American Institute of Physics, www.aip.org/history-programs/niels-bohr-library/oral-histories/4572, 1985. Accessed: 2023-03-29.
[5] Zurich Instruments MFLI. https://www.zhinst.com/products/mfli-lock-in-amplifier. Accessed: 2023-03-29.
[6] A. M. Skellett. The Coronaviser, an Instrument for Observing the Solar Corona in Full Sunlight. Proc Natl Acad Sci USA, 26(6):430, 1940.
[7] D. C. Tsui, H. L. Stormer, and A. C. Gossard. Two-dimensional magnetotransport in the extreme quantum limit. Phys. Rev. Lett., 48:1559, 1982.
[8] L. Gross et al. Bond-Order Discrimination by Atomic Force Microscopy. Science, 337(6100):1326, 2012.
[9] Stanford Research SR844. http://www.thinksrs.com/products/SR844.htm. Accessed: 2023-03-29.
[10] Wikipedia Article: Fourier Transform. https://en.wikipedia.org/wiki/Fourier_transform. Accessed: 2023-03-29.
[11] Wikipedia Article: Fourier Series. https://en.wikipedia.org/wiki/Fourier_series. Accessed: 2023-03-29.
[12] N. Thrane. Zoom-FFT. Brüel & Kjær Technical Review, (2):3, 1980.
[13] Zurich Instruments SHFLI. http://www.zhinst.com/products/shfli-lock-in-amplifier. Accessed: 2023-03-29.
[14] Zurich Instruments UHFLI. http://www.zhinst.com/products/uhfli-lock-in-amplifier. Accessed: 2023-03-29.
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