2018年第二四半期版

今年は50人以上のZiniansが、Zurich Instrumentsの創立10周年を祝っています。さまざまな課題を乗り越え、数多くの思い出深いカスタマーサポートの成功体験が得られた充実した10年間でした。個人的に頻繁に訊ねられる質問は、立ち上げ当初に「すべてが始まった経緯」に関するものです。Zurich Instrumentsが、1つの研究室での1つのプロジェクトから、世界中で数百もの最先端の科学研究所が製品を採用し、スタッフが50名を超え、毎年20%の収益増を続ける企業へと成長した経緯を、この機会にお伝えいたします。その中でも、60年の歴史があり、すでに確立された産業界で、成功し自立した学生起業による会社の設立を通じて学んだことに焦点を当てます。

大学生活

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)博士課程在籍中に、Zurich Instruments現CTOのFlavio Heerと私は、生きたニューロンと連結するCMOSベースのニューロチップを開発しました。その際、単細胞のインピーダンス分光も行い、ロックインアンプを使用しました。これにより、当時の機器市場が大多数の研究者のニーズを満たしていないことを身をもって知りました。デジタルロックインはすでに市販されていましたが、周波数に制限があり、アナログの同等品の模造に過ぎず、その潜在的性能とデジタル処理の分析力の大部分が未活用のままでした。

私たちの研究では、8つの周波数による同時復調が必要でしたが、1度に1つしか測れない装置しか市場にありませんでした。つまり、Stanford Researchロックインを8台使うしかなかったのです。機器8台分の費用の問題を除いたとしても、その簡潔性の欠如が、FPGAをベースとし、DACADCを統合したデジタルロックインアンプを独自に開発する原動力でした。ひと夏の学生プロジェクトで、実現可能性を示す解決法が見つかりました。。次の学生プロジェクトでは、生産用途の設計を定めました。そして私たちは、市場で売られているすべてを凌駕するロックインの製法を手に入れました。自分の会社を作るという子どもの頃の夢に火が付きました。私の博士号の研究ほど最先端でなくとも、学生起業へのチャンスが見えました。

「しかし、誰でもできることなのです」

私は自分のアイデアを仲間と指導教官のHenry Baltes教授Andreas Hierlemann教授に広めることから始めました。両教授も仲間も、とても支援的でした。しかし、既製のコンポーネントとソフトウェアをベースとした製品であるロックインアンプ開発事業の可能性にだれもが賛同したわけではありませんでした。共同研究者の多くが、知的財産権で保護されている技術の研究に何年も費やす必要はないと指摘しました。誰もが作れて、簡単にコピーできるものだと言われ、私は反論できませんでした。

しかし私には確信がありました。スイス連邦工科大学チューリッヒ校が一般ユーザーの代表であるならば、どのようなロックインを現場の人々が欲しているかがはっきりとわかっており、それを作れば売れるということを。市場はそこにあったのです。数年後にわかった現実は、最高性能のロックインを私たちが想定する完璧なレベルにするためには、何十人もの技術者と何年もの月日を費やすということで、それこそが、誰も乗り気にならなかった理由でした。

ひとりではできない

このロックイン開発の立ち上げをひとりで行うことが無理なことも承知していました。幸い、立ち上げに際して、親友で博士号を持つチームメイトのFlavio Heerの卒業後の就職先が決まっていませんでした。数多くの研究開発職の働き口を探しましたが、、彼の興味をそそるようなものはなかったようです。Flavioのような人を魅了する挑戦はなかったというだけのことです。ロックインアンプを開発する会社の立ち上げは挑戦する値打ちがあり、1年をかけてどこまでできるかやってみようと意気投合しました。

チューリッヒの芸術学校で私が指導したアート・ミーツ・サイエンス・プロジェクトの卒業生Beat Hofstetterが、私たちの計画に興味を持つのに時間はかかりませんでした。設立チームが揃った。物理学者の教育を受け、筋金入りの回路設計者になる運命を持ったFlavio、デザインスクールを出たがプログラマーの心を持つBeat、エンジニアの教育を受け、ソフトウェア、信号処理、デジタル設計に情熱を燃やす私。

Zurich Instruments founders: Flavio Heer, Sadik Hafizovic, Beat Hofstetter

ブートストラップ

2008年4月に私たち3人は、10万スイスフラン(およそ10万米ドル、約1,000万円)の資本金を自分たち、家族、友人たちから調達してZurich Instruments AGを設立しました。そのときには私たちはもう、スイス・スタートアップ・エコシステムに全力を注いでいました。さまざまな機関から得られるすべてのアドバイスを取り入れました。ビジネス・コンペに資金提供をするさまざまな財団を調べ、13万スイスフラン相当のVenture Kick賞、10万スイスフラン相当のdeVigier賞、そして10万スイスフランの貸付金をVolkswirtschaftsstiftungから受けることに成功しました。さらに、Zurich Instruments AGが商品化を目指す技術の研究をスイス連邦工科大学で、資金提供を受けて1年半行えるポストが用意されたCTIプロジェクトを獲得しました。ビジネスプランの書類作成とコンペでの売り込み以外では、私たちは世間から隠れ、世界最速のデジタルロックインアンプ(HF2LI,50MHzロックインアンプ)の開発に専念しました。  会社設立からたったの1年で、私たちはHF2LI初代モデルの販売を始めました。投資家を呼び込む前に絶対に達成したかった中間目標でした。結局のところ、社の組織がスリムだったことと順調に伸びる売り上げとで、投資家を募る必要はありませんでした。今もそれは変わっていません。

もうすでに皆さんは、マーケティングと営業の経験が欠けていることにお気付きでしょう。まさにそのとおりで、最初に雇った社員がこれを変えてくれました。ハイテク産業が危機に直面した2008年には、Stephan Kochを広報営業部長として迎える機会を得ました。Stephanは、国際的な大企業に長年勤めたあと、何千人もの社員を抱える会社から、最初の事業利益に期待していた社員3人の会社へと冒険を求めて飛び込んで来ました。

新規参入者

社員が8人に増えたとき、私たちはきわめて慎重に戦いを選択しなければなりませんでした。焦点を絞り続けることは必須でした。私たちは、自分の庭である学術研究市場にとどまりました。費用が捻出できる限り、数多くの科学会議に出向き、当社のロックインアンプを展示しました。製品は素晴らしい評価を受け、目的を貫く原動力となりました。

さてここで、市場に進出した最初の年の驚きの体験をお話したいと思います。新規顧客を獲得するために信頼がいかに重要であるか、どのようにブランディングが信頼を確立し、従来の広告手法がブランドの構築に(まだ)効果的であるか、を実証するものです。たいてい、Zurich Instrumentsの名前を聞いたこともない人は、「どこの会社か」「いつから創業しているのか」「何台売ってきたのか」「社員は何人か」などの質問をしてきます。

しかし、Physics Todayのような一流の出版物で我々の広告を見た事があれば、話はまったく違ってきます。「あなたの会社のロックインを見ましたよ。詳しく教えてくれますか」とか「Zurich Instrumentsの名前を知っていますよ。貴社のロックインは復調回路をいくつ備えているのですか」とか。見込み客との信頼構築は、Physics Todayへの信頼がZurich Instrumentsへの信頼へと繋がって、一見したところ順調に開始しました。この経験は本当に驚きでした。言うまでもなく、そこで得られた信頼が、製品と当社への期待を生み、それに応えるべく私たちは頑張りました。

現在も私たちは、評判の良い定期刊行物を広告戦略に利用することにこだわり、毎年50以上の会合に出席しています。やがてウェブサイトも重要性を増し、私たちの製品を宣伝する重要なただひとつの手段になるでしょう。

直接販売

もうひとつの驚きとちょっとした挫折は、販売を外部委託することがほぼ不可能だったということです。私たちは設計のエキスパートではありましたが、営業のエキスパートではなかったので、販売のパートナーを探しました。しかし、無名ブランドに投資する気などありませんでした。いくら私たちの製品が10陪の性能を2倍の値段で発揮することを売り込んでも。

このように断られたことで、当社には高性能で高付加価値の商品があるけれども、消費者心理の正しい知識を持つ有能な人材が必要であることがわかりました。価値ある製品を直接販売し、最高のカスタマーサービスを行うすべは身につけていました。しかし、ほとんどの販売業者には最安値で売ることの方が重要で、私たちの高い要求を満たすパートナーを見つけるには長い時間を要しました。そこで、緊密な協同体制を取り、パートナー企業がZurich Instrumentsのアプリケーションサイエンティストと引き続きコンタクトを取ることができるようにしました。現在、研究開発部門と営業部門は同等の規模で、企業戦略としてはいつでも直販を行うことを選択肢のひとつとしています。

世界を目指す

世界中のお客様と身近であることが、世界に展開するZurich Instrumentsにとって適切な戦略だと確信しています。この目標のために、フランスに本社を、上海に子会社を置いており、ボストン地域にもうひとつの子会社を開設する予定です。これに伴う新たなチャレンジは、Zurich Instruments固有のDNAを残しつつ、異なる文化とビジネスシステムに融合した中国型、アメリカ型のZurich Instrumentsを作ることです。これが上手くいけば、金銭面だけでなく、企業経営陣からの注目を得る上で効果的な投資であることがわかります。お客様との交流の質が高まることで、この投資が適切なものだと証明することになると確信しており、幸いなことに、この長期戦略を遂行するために投資家に同意を求める必要がありません。

これからの道

数年以内に、100人規模の会社になると期待しています。それに伴う組織改革は、今も、そしてこれからも続いていきます。製品について、現時点で3つのプラットフォームがあります。ロックインアンプインピーダンス分析器量子情報処理システムです。3つすべてが活躍しており、各分野での基準になっています。

。当初のビジョンが実現し、ロックインアンプ業界の技術的リーダーになったことを確信しています。新たなビジョンは、初の民生用量子制御システム(またの名を「quantum stack」)を市場に投入することです。デルフト工科大学でQuTechと、スイス連邦工科大学チューリッヒ校でQuDevとの共同研究に参加し、量子製品の基準設定の開発をサポートしています。最初の目に見える成果は、最近発売した HDAWG(高密度任意波形発生器)です。

当社の起業エピソードが興味深く、なんらかのインスピレーションを与えることができれば幸いです。Zurich Instrumentsでの自身の仕事はとても値打ちがあった、そしてなお値打ちがあると思っています。社内で素晴らしいチームのメンバーが周りにいることが最高で、さらに社外でも優れた人たちが周りにいます。当社のお客様は、途方もなく興味深く重要なことを行っています。その任務の一翼を担っていることに、感謝と喜びを感じます。Zurich Instrumentsの実現に寄与してくださった皆様に感謝いたします。

展示会スケジュール

ここでお会いしましょう。

Zurich Instruments 新個人情報保護方針

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