UHF-BOXオプションは、UHFLI ロックインアンプに2つの独立した600 MHzボックスカーアベレージャ・ユニットを追加し、非正弦波形を使用するアプリケーションの測定速度とS/N比を向上させます。デジタイザやオシロスコープの測定とは異なり、ボックスカー・アベレージャの測定結果は、デジタル・ドメインと、任意に設定可能なオフセットおよびスケーリング係数を持つアナログ信号として出力できます。
主な特長
- 2個のボックスカーユニット
- 600 MHz繰り返しレート
- 2個の周期波形アナライザ
- 450 MHz以下の繰り返し周波数においてデッドタイムがゼロ
- ベースライン抑制と差分測定
- グラフィカルなボックスカーとベースライン・ウィンドウの選択
- 512次までの高調波アナライザ
ドキュメント
ボックスカー測定は、 LabOne®のユーザー・インターフェースにより簡単に設定できます。周期波形アナライザ(PWA)は、ノイズを抑制し、目的の特徴を強調するために平均化された波形の1周期を表示します。ボックスカーウィンドウは、PWAカーソルを波形の関連部分に配置することでグラフィカルに設定できます。第2の平均化ウィンドウを設定することで、ベースラインの変動を低減し、差分測定を可能にします。測定速度とSN比の最適なトレードオフを実現するため、測定結果は連続して1~100万回平均することができます。
ロックインとボックスカー
ロックイン アンプは、正弦波信号の解析や周波数スペクトルの特定成分の抽出に理想的ですが、ボックスカーアベレージャは、低デューティサイクルの信号に適したツールです(図参照)。パルス実験で得られる典型的な入力信号は、パルス幅Tp、パルスの繰り返し周期Trep、デューティサイクルdで表すことができます。ボックスカーアベレージャでは、入力信号に、パルス幅TBoxを持つ矩形パルス列としても知られるボックスカー関数を乗算することにより、ボックスカー・ウィンドウの外側のノイズを除去するこごができます(図c参照)。ボックスカーゲートの内側の信号を積分して、N周期にわたって平均化された1周期あたりの値を得ることが出来ます。
低デューティサイクル信号からのデータ抽出には、基本周波数に加え同時に多くの高次高調波からの情報が必要です。この高い周波数の情報を捕捉するために、ボックスカーアベレージャはベース周波数の何倍もの信号入力帯域幅を必要になります。そのため、ボックスカー測定のセットアップでは、ロックイン測定に比べてより多くのパラメータを注意深く調整する必要があります。その結果、測定時間が短縮され、SN比が向上します。これは、イメージングなどの分野で大きな効果を発揮します。すなわちロックイン測定とボックスカー測定は、周期信号を分析するための補完的なツールといえます。
ボックスカー検出の原理についてのより詳しい解説は、ホワイトペーパーをご覧ください。
デジタル方式のUHF-BOXボックスカーアベレージャは、アナログ方式のボックスカーアベレージャに比べて多くの利点があります:
特徴 | アナログ | UHF-BOX |
---|---|---|
トリガジッタの影響 |
受けない | 受ける |
長方形のボックスカー・ウィンドウ |
不可能 | 可能 |
中間値での出力/確認 |
不可能 | 可能 |
非周期的な信号の測定 |
可能 | 不可能 |
グラフィカルなユーザーインターフェース |
なし | あり |
周期波形アナライザ(PWA) |
なし | あり |
フレキシブルなリファレンス・ウィンドウ |
なし | あり |
最大アベレージング周期 |
10000 | 1 M |
デッドタイムフリーの最大繰返し周波数 |
< 50 kHz | 450 MHz |
さらに、UHF-BOXボックスカーベレージャは、UHFLIロックインアンプが持つ他の機能と連動して動作することができます。例えば、結果をロックインユニットに送ってさらに復調したり、演算ユニットに送って他の測定結果と組み合わせたりすることができます。
- パルスレーザー分光法:ポンププローブ、THz時間領域、超高速
- 非同期光サンプリング(ASOPS)、デュアルコム分光法
- 放射光実験
- 電気的ポンプ&プローブ実験
- パルスレーダ
- 蛍光減衰分析
- タイムオブフライト質量分析
- 超電導体磁場侵入
- 工業計測:故障解析、レーザー電圧プローブ・イメージング、パターン認識
ベースライン抑制と差分測定
ボックスカー・ウィンドウのみを使用すると、スペクトルのDC成分を含む測定になります。このため、測定の過程でDCドリフトの影響を受けやすくなります。通常のボックスカーウインドウに対して任意にシフトしたリファレンスウインドウを作成し、メインのボックスカーゲートから差し引くと、このDC成分が除去されます。これにより、DCドリフト・アーティファクトがなくなり、長期にわたって安定したデータが得られます。
リファレンス・ウィンドウは、差分測定にも使用できます。例えば、ポンプ・プローブ実験では、測定すべき効果を誘導するポンプ・パルスは、2つのプローブ・パルスごとにしか存在しません。ポンプ周期にロックすると、ポンプパルスとプローブパルスを同じ周期で表示することができます(図参照)。ここでポンプとプローブの混合信号の測定にボックスカーウィンドウを使用し、プローブのみの信号の測定にリファレンスウィンドウを使用することが可能です。図では、緑色の時間トレースがボックスカーゲート単独の測定結果(正弦変調されたパルス列)を示し、赤色がボックスカーウィンドウとリファレンスウィンドウの差分に相当します。ポンプによってもたらされる系統的なオフセットが除去され、一部のノイズ成分が抑制されることで、SNRと精度が大幅に向上しています。
Periodic waveform analyzer
周期波形アナライザ (PWA) は、サンプルの連続したストリームを取り込み、それらを参照発振器の位相に同期させます。その後取り込まれたサンプルを位相の毎に平均化します。この操作を参照周波数の多くの期間にわたって実行すると、高密度の位相とサンプルのペアが生成されます。X軸上の位相で平均値をプロットすると、強力なノイズの抑制で目的の信号を位相ドメインで表示できます。
PWAは、各入力サンプルをその位相に基づいて1024のビンのいずれかに配置し、2π/1024または0.4度の分解能で波形プロットを生成します。この解像度が十分でない場合は、対象領域を拡大して、位相の解像度をミリ度まで下げることができます。
平均化による高いノイズ除去と高い時間分解能の組み合わせにより、PWAはボックスカーとベースラインウィンドウを正確かつ簡単に設定できる強力なツールになります。
高調波アナライザ
高調波アナライザ
高調波アナライザは、PWAデータのFFTを表示し、参照周波数の高調波における信号振幅スペクトル分布を表示します。これは、DCおよび第1次から第511次高調波までのエネルギー分布に対応します。この機能により、ユーザーは、ロックインアンプやボックスカーアベレージャから最適な測定方法を見極めることができます。
実際、信号が顕著なピークを持たずに多くの高調波成分にわたって広がっている場合(左上図参照)、最良のSN比を得るためにはボックスカー検出の方がより良い選択となる可能性が高く、一方、1つの高調波成分が強力な信号の場合(右図参照)、ロックイン検出が有効な選択肢となる可能性が高くなります。
演算機能
UHFLI ロックインアンプに搭載された演算ユニットは、測定器内部で2つのボックスカーユニットの演算結果を変数として他の演算を行うことが出来ます。これにより、ショットごとの値に直接正規化するなど、さらに高度な測定の可能性が広がります。
一部のアプリケーション、例えば非線形吸収の材料の特性評価では、パルスごとにサンプルに供給されるパワー量を正確に知る必要があります。その場合別のフォトダイオードを用いてレーザーの出力を測定し、演算ユニットによってサンプルに到達するパワーを正規化することで、より正確な特性評価が可能になります。
変調パルスの測定
低デューティサイクルの信号にさらに変調がかかっている場合、ボックスカーユニットの出力信号をそのままロックインのデモジュレータの入力にルーティングすることができます。これはデジタルドメインから離れることなく実現でき、最小限の時間で最高のSN比を高い精度で引き出すことができます。典型的なアプリケーションとしては、パルスレーザー光源の追加振幅変調(図参照)や、ポンプ・プローブ実験における周期的な遅延変化があげられます。
デジタルボックスカー仕様
Input sampling | 12 bits, 1.8 GSa/s |
Periodic waveform analyzers | 2 |
Data bins for periodic waveform analyzer | 1024 |
Data bins for multi-channel boxcar | 1024 |
Harmonic analyzer, simultaneously measured harmonic frequencies | 512 |
Advanced operation modes | Baseline suppression Fully differential measurement Multi-channel boxcar |