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お客様インタビュー:Philip Moll氏

Philipさん、こんにちは。今現在Philipさんのグループが携わっている研究をお話いただけますか?

私のグループおよび私はメソスケールにおけるまれな電子特性に関心を持っています。新しく発見された材料から電気回路を構築することにより、私たちは発見後早期にその材料の基本的物性を厳密に検査して、チップ環境におけるそれらのパフォーマンスをテストすることができます。

マックスプランク固体化学物理研究所では、私のグループは研究を進めるにあたり必要となる、化学と固体物理学の両方における強力な専門技術の学際的環境を享受しています。焦点を当てている主な材料は非従来的な高温超電導体、強い相関金属、また位相的半金属です。私たちは強い磁場を使用してこれらの物質、主にフェルミ物理学の量子の振幅を研究し、超伝導体機器の臨界場を精査します。

あなたはドレスデンでは、いくつかのオプションのついたHF2LIとMFLIロックインの両方を使用していますね。それらはあなたの実験設定にどのように適合していますか?

典型的な計測には、ヘリウムクリオスタットや強い磁場での抵抗計測が含まれます。現在、最も強い磁場は16 Tですが、私たちは極小波長におけるDirac- and Weyl半金属の研究のため、新しい20 Tの磁場設定を構築中です。これらの計測のために、MFLIは私たちが日常的に使用する、小さな信号の高精度で低ノイズな計測に役に立つロックインアンプなのです。

典型的なデバイスは、サンプルに対して電流バイアスを適用しながら、パラレルに計測される複数の電気端子が特長です。私たちは高度な伝導性材料に焦点を当てているため、nVレベルの信号に最も注意を払います。また、複数の共に起動されるMFLIユニットを使用しパラレルに様々な端子を計測します。これらのプロジェクトにおいて、私たちは主にdc反応に注意を払い、低周波を使用します(<200 Hz)。HF2LIはより高周波での共振実験に使用されます。

それでは、当社のロックインのどういった特性が特に有益だと思いましたか?

私たちはHF2LIを選んだのは特にその安定したフェイズロックループのためで、それを知ったのは私がUCバークレーにいた時でした。私たちはそれを使って共振回路の素早い変化を追跡しますが、これは、FPGA-ベースPLLオプションを使って簡便に行うことができます。最終目標は、パルスフィールドマグネットの共振回路の周波数変化を追跡することです。これらの強力なマグネットは数ミリ秒のうちに最大100 Tを届けることができます。FPGAの迅速なロジック反応を通し、私たちはパルス継続時間における周波数変化を追跡する計画です。HF2LIは高周波アプリケーションにおいて機能していますが、私たちは低周波における低信号の正確な計測を最も必要としています。そこで私は、低周波における小さな信号レベルに同様の電気的デザインを拡張したMFLIが開発されたと聞き嬉しく思い、市場に出されてすぐに最初のユニットをいくつかオーダーしました。私は低ノイズ入力ステージおよびソフトウェアの柔軟性が気に入っており、ADCのより少ないビットの他のロックインアンプをよく使う者として、これらのユニットにデジタルノイズが一度も表れていないことを感謝しています。

しかし正直なところ、私がこれらのロックインを最も好きなところは、フロントパネルディスプレイがないところです。最初、私はオールソフトウェアソリューションへ向かうことに大変懐疑的でしたが、今は戻るつもりはありません。ロックインアンプの本当の危険は、それらが無意味な入力・出力をする箱になってしまうことです。信号が本当に検波に有効か判断をするための時間領域を確認する必要上、スコープの付いていないロックインは災難をもたらしかねません。しかし、研究室で遅い時間になり、あなたが徹夜の計測を開始するとして、あなたは本当にスコープを持ち込みたいでしょうか?そこで研究室では多くの学生がこのステップを飛ばします。MFLIでは、設定のためにブラウザを開かなければならず、またすぐにデジタルスコープで入力信号を見ることができるため、これを完全に除くことができます。このことによりアーティファクト計測の数を明確に減らすことができます。接触の非直線性や漏電といったサンプルの問題が迅速に発見されるからです。

あなたの研究分野は今後数年でどのように変化するでしょうか。当社が注意して見ておく必要がある新しい発展が何か有るでしょうか?

私は、シリコン技術用に開発されたマイクロおよびナノテクノロジーツールを活用して、新しい材料をさらに機器に統合したいと思います。強い電気的相関のある非従来型の金属について研究すべきことは多々あります。また大型乾燥希釈冷蔵庫の開発は、サブケルビン温度を必要とする材料は学術的な興味の対象に終わり商業的な応用はできないのだ、というパラダイムを変化させつつあります。量子情報テクノロジーの出現はこの開発を強力に推進し、数十年後には希釈冷蔵庫がGoogleやその他のコンピュータクラスタにおける標準ツールになるのを目撃することになるかもしれません。

これら今日のアプリケーションのほとんどが従来型の超電導体材料を使用している一方、これはまた重フェルミオン超電導体といった非従来型の材料に基づいた新しいアプリケーションについて考えさせてくれます。こうした材料から機器を実際に作ることおよびそのパフォーマンスをテストすることが興味深いテクノロジーへつながるかもしれません。応用量子材料における一般的発展の一つは、機器の複雑さがますます増していることです。電気的実験となると、接触端子の数が増えていることだといえます。市場では複数チャネルの平行計測のための興味深いソリューションがいくつかあり、私は将来MFLIの複数チャネルバージョンを見たいと思います。

あなたは米国へ行く前ここ、チューリッヒで研究キャリアをスタートし、それからヨーロッパへ帰ってきました。スイス、カリフォルニア、ドイツの科学環境でどのような違いがありましたか?また同様のステップを考えている人々にどのようなアドバイスがありますか?

科学コミュニティは世界的コネクションのため、人々が抱く関心はどちらかというと世界的に似通っていますが、アプローチや研究文化は今でも大変多様性があります。私は自分が通ってきたすべての場所を今までのところ十分に楽しみましたし、私は常に彼らの個々の強みから学ぼうと努めています。ETH Zurichでは、私はしっかり組み立てられた研究について多くを学びました。そこでは、文字通りすぐその場にいる世界的な専門家と協力したプロジェクトを構築していました。研究設備が利用できる点については卓越しており、私のある研究では電子顕微鏡センターSCOPE-Mでよく手入れされたマイクロ構造器具を十分に使うことができました。私は、世界的施設に投資して優秀な研究者たちを引き付ける戦略は、科学の中心地としてのスイスの主なアドバンテージの一つだと思います。

バークレーへ行ったことは大変興味深い変化で、私は米国のダイナミックリサーチアプローチ、という決まり文句が本当に米国の研究のあり方を示しているのだということを発見しました。教授陣、研究者、学生たちの間の活動や相互のやり取りが多く、キャンパスには活気があります。時間尺度はずっと短く、また潜在的な失敗を恐れずクレージーなアイディアにも挑戦する意思は、私が私のグループに持ち帰ったものです。

私が次に訪れたマックスプランクは180度異なるものでした。その時、私は初めて独立した研究者のポジションを得ました。もちろん私はどのようにグループを率いるか学ばなくてはならず、また私自身は一歩引いて他のメンバーに私が大変楽しんでいたこと、例えば実験のセットアップをする作業などをやらせることも学びました。幸運なことに、私はポスドクや学生からなる素晴らしいチームを組むことができました。研究所には素晴らしい同僚がいて、科学に集中するには素晴らしいところです。

最後なりますが、あなたは研究室の外ではどのように時間を過ごすのですか?

ああ、それはよい質問ですね。私は大学にいるようになるずっと前から、いつも何か新しくてクレージーなことに挑戦する好奇心を持っていました。ちょっと問題があるかもしれませんが、しかし私は研究室でアイディアについて考えているのが本当に好きです。それで、私の自由時間ですが、私はよりクレージーなアイディアを試すのが好きですし、そのほとんどはうまくいかないのですが、私はなにか新しいことに挑戦するのを本当に楽しんでいます。もちろん、中にはうまくいくこともあります。それで、私は自由時間のほとんどを研究室で過ごします。たぶんだから私は研究所の夜間警備の人たちを全員知っているのでしょうね。私が研究室外にいる時は、単に妻や友達と時間を過ごして楽しんでいます。料理が好きですし、夏にはセイリング/ボートやスキューバダイビング、冬にはスキーもします。

Philip Moll

Philip Moll氏は、ドイツドレスデンにあるマックスプランク固体化学物理学研究でPhysics of Microstructured Quantum Matter(MPRG)グループを率いています。

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